血文字、況んや血統と言う意味では無く、流血させる者という意味か。
微妙な意味合いを追うならば、血飛沫を上げさせる者がより正しいだろう。
辻切りの如き名を冠する短剣ブラッドレッター。
操るは手に機微を宿す異国の銀細工師。
戦いに於いては、下手なれど器用という評価であったが、
装具と薬による戦闘力の強化は、その評価を覆すに足る力を持っていた。
だが、馬上には短剣は些か遠く。手元の槍は相手を退けた。
「虎かあ。虎は毛皮だからなあ。虎の皮があってほしいなー。」
女はまるで何事も無かったかのように、昨日の会話の続きを放ち、去っていった。
服装、振る舞い、訛った帝語、それらが混然となり未だ年齢不詳の人物である。
異邦人が計られ難い存在なのは、共同体の文化的文脈の外に位置するからに他ならないが。
冒険者の店、数々の品を冒険者より買い受ける公的機関であるが、
持ち込み品は実に多岐に渡るため、一つ一つを勘定すると非常に手間が掛かり、
現場の混乱を招くために、一部の品目は性能に閾値を設け金額を算出している。
従って職業鑑定上は、虎も野犬も、皮は等しく等しく毛皮と扱われる。
性能によって定義される点が味噌であり、
長毛にして密度の高い熊の毛の方が高級毛皮として扱われる。
商用としては、野犬より虎の毛皮の方が高級なのであるが、
こうした差が、冒険者の店の利鞘となっているという話も聞く。
味噌。己もまた異邦人。
去る女の背を見送り、老人は随分染まった物と思った。
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「ノーコン」って言葉を使ってるのが個人的にちょっとツボ
というコメントがあったので補足に都合が良いので投稿。
郷に入りては何とやら、歳を食っても案外人間染まっていくものです。
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