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「三なる凶星が磨羯に輝くとき、地上に異変と災難を齎さん。」

星が疫病を齎すなどという迷信は、今や田舎のごく一部にしか残っていない
いっそ牧歌的な文化の残滓に過ぎないが、今日に至り巷に溢れる謎の奇病と、
何処より湧き出たとも知れぬ火星を信仰する勢力の台頭、
市井に溢れる、ニセ薬草、ニセ世界樹の葉、ニセコカトリスの羽、
脱法ハーブ、違法解毒術、不認可療術師、謎の民間療法、乱獲されるコカトリス。
遂には、コカトリスを模した嘴状のマスクを被る医者も出現し、
世は古の暗黒時代を思わせる狂気と混迷が帝国に渦巻いていた。



当初、静観を決める風情であった帝国も、此れら混乱が市場経済に伸びるや否や、
大規模な都市封鎖を講じるに至る。市井に蔓延る無闇の徒などは一笑に付して
闇に葬ることも吝かでは無かったのであろうが、事が表面化する頃には、
既に想定を遥かに超える規模まで拡大しており、混乱と蔓延の分断、
衛星都市を含め、国体としては事実上の凍結を持って事の収拾を図った。

指揮を執ったのは宰相ハーゲンダッツ。侵略国家の嫡子にしては、
その覇気の無さを長年に亘り指摘され続けていたが、事務方の彼としては、
寧ろ与し易い問題だったらしく、混乱を余所に淡々と事を進めた。
また同時に相談役として招聘されたのが、将軍ベクターナである。
彼が招かれた理由は、兵站の構築に関して近隣各国を含めても、
抜きん出た手腕と功績を持っていたからに他ならない。
戦いにおける継続能力は、計画のもと下部基盤と物流が噛み合う事で
最大限の効果を発揮する。半ば軍人、半ば商人であるこの奇人にとっては、
此方が専らの主戦場なのであって、片手間に付き合わされる通り魔的な挑戦者より
余程楽な相手には違いなかった。

一方干上がったのが帝国に根を付けた職業冒険者たちである。
本来的な、つまり根無し草の冒険者は、その生計基盤を国に持たがぬゆえに、
早々に他国へと散っていったのであるが、長じて財を成した者たち、
職業冒険者とも呼べる人種は、各地方に分散させた資産が都市凍結に
より枷となり、捨てるか忍ぶかの二択を迫られた。

無論、そうして廃業した者も少なからず存在したが、
冒険者とは、個々の資質は別にして本質的に「ならず者」である。
森役人、森番人の目を掻い潜り、鶺鴒の森でコカトリス狩りに勤しむ者。
転移術で資産を全て引き上げて消え去る者。
雨天曇天新月の闇夜に紛れ、空から違法に移動する者。
禁制品を裏社会に持ち込んで財を成す者など、
様々な意味で自立をしていたこの人種にとって疫病は然程の問題ではなかった。

旧市街の裏通り。夜も煌々と照る絢爛な佇まいの「メズーザーの館」は、
その主たる客が、この度の混乱で入れ替わったこともあり、やや下品にも映った。

「あー。。アレだな。遺跡の底で石化の呪いに掛けられたときより危機感ねえわ」
「流石に森は監視が厳しくなってきたけどな」
「役人に捕まったら、ケツの毛まで毟り取られて、鳥マスク付けて強制労働だってよ」
「ははは、泥棒稼業から勤労奉仕の徒とは全く大出世だな。」
「ひょっとしたら知ってるヤツもいんのかもしんねえぞ」
「そういえば、よく森に潜ってたルーニーって最近見ねえな」
「アイツはなぁ。ワイバーンにケツを噛まれて療養中だってよ」
「ナハハ、世界樹の葉でも差し入れてやるか?」
「おいおい、お前まで人の道に目覚めたってか。どこで仕入れたんだよ」
「独自のルートに決まってんだろが、治るかは知んけど。ヒヒヒ」
「馬鹿に付けるいい薬か。まーちっとは賢くになるかもな。おっと、仕事だ。」

「増えたの、あの手の輩」
「あら、いらっしゃい。随分珍しいじゃない」
「ふん。蟄居にも飽いたわ」
「余生の正しい過ごし方じゃなくって?」
「身寄りのない老人に、楽隠居の選択肢はあらぬ」
「そうかしら?若いコでも雇って身の回りの世話をさせたらいいじゃない」
「武器の手入れが出来るなら考えんでも無い。まあ、世話が必要な程の家やら物を持っておらぬがの」
「あら意外。ワシの武器には髪一本触れさせんとぞぅ、とかなんとか言うと思ったのに。」
「所詮は道具よ。鼻垂れどもに触らせるのは惜しい品が多いのも事実じゃが。」
「それなら紹介してあげよっか。出来るコも多いわよ」
「楼主の貴様がか?」
「アラ?見る目をお疑いかしら。」
「忘八を信じろというのは無理な話じゃろ。」

「はいはい。マデュロな話の途中に失礼しますよ」
「何じゃ小僧」
「おーおー。小僧ときたぜ、このジッちゃんはよ。」
「お。舐められるのは嫌いか?なればケツでも舐めるか?」
「ヒハハ。勃起モンのセリフ吐くじゃねえか。突っ込んでやろうか?」
「やだ。禁断の園ね。」
「お主の園じゃろ。」
「あらあら、可愛げのない禿(かむろ)さんね」
「誰がハゲじゃ」
「いや、ハゲだろ?!」
「いやはや近頃もの忘れが酷くての。忘れておったわ」
「ほらー。やっぱりメイドさんが必要でしょー?男の夢よねー。」
「儂の夢を勝手に決めぬで貰えるか?」
「じゃなくてよ?話しがしてぇんだけど」
「早よう申せ。」
「おう。世界樹の葉。あんだけど、アンタ買わね?
 市にゃ出せねえ品だが、アンタならツテもあんだろ。」
「現物があるなら考えんでも無いぞ」
「ここじゃ出せねーよ。人の目ってものがあんだろ」
「ポンコツ揃いの酒場じゃ。節穴しかおるまい。」
「ソイツは否定できねぇな。」
「まあ!失礼ね!」
「マジな話。これで譲ってやんぜ」
「二本か、まあ魅力的じゃな。」
「実際こんだけ混乱してっと、銭なんか役に立たねんだけどな」
「なれば、其れでわらしべ長者でも目指す方が良くあらんか?」
「ハーゲンダッツが頑張ってるからな。特需商売ってのは足が早えんだ」
「ふむ?・・まあ良かろう」
「ちょっと!メイドさんはどうすのよ!そのお金で1年は楽に雇えるわよ!!
 というか泊まって行きなさいよ、枯れてたってまだなんとかなるでしょ!」
「商売人じゃの。では今日は1室借りようか」
「え?あら?そう?じゃあ何人付ける?」
「そうさの。綺麗所を三人でどうじゃ?」
「やだ、お大尽!」
「お主は分かっておるな?」
「おーよ。つか。なんでこの店なんだよ。」
「聞かん坊の頭を撫でて回るには、良い塩梅の広さじゃろ?」
「マジかコイツ。。」
「私、暴力的な人きらーい。お店も散らかっちゃう。」
「抜かせ。貴様が一番油断ならん。」
「えー、そういう事言うの?」
「貴様のお掃除に付き合わされる身になれい。」
「私っておじいちゃんっ子だったから頼りたくなるのよね!お陰で色々綺麗になったわ。」
「ほざきおるわ。・・小僧。分かったらはよう往ね。これからは大人の時間じゃ。」
「ケッ。妖怪どもめ。あー・・姉ちゃん達にヨロシク。」

男は金子の入った袋を受付に投げて寄越すと、
仰々しく扉を開けようとする男達を尻目に、
扉を押し蹴り足早に立ち去っていった。
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無題
2020/11/12(Thu)16:44:37
他の冒険者がどう散っていったのか
想像を掻き立てられますね…。
ホヅミさんとか、根を張れなかったらどうなっちゃうのか
裏鍛冶師(?)として細々と…
ホヅミPL 編集
無題
2020/11/21(Sat)06:57:36
住人の皆さんは、また何処かで上手く生活してると期待しております。
しかし、爺さん生きていて良かった。
劇薬でも差入れしよーか?(笑)
SAI 編集
 
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