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冒険家ジョージ・ヘンドリックは幼少に夢見た世界樹を求め、
東の海の島へ旅立った。彼の冒険記は現在多くの人々に慣れ親しまれているが、
実は現存する最古の書が既に古典とされるほどの古書で、
書としての方向性も歴史、風俗、民族、地理を網羅した半ば専門書であり、
今尚研究が続く難読書であることはあまり知られていない。

難読書とされる理由は、技術最盛を誇った古代帝国時代の時点で古典であり、
初版年代が不明。現存する書も全108巻とされる内の僅か73巻しか存在せず、
現存する書も古代帝国時代に翻訳された改訂版であることが挙げられる。
熱心な愛読家の意見では73巻の内11巻はこの時代に加えられた偽書である、、との事。



「何やら爺にはさっぱり分からん」
「ですから!特にこの42巻は筆が乗って無いっていうか、
 ヘンドリックスならあり得ない内容なんですよねー」
「疑惑の書か。」
「ヘンドリックスは現在でも通用する悪魔的インテリなのですが、
 言葉遣いといい、書き振りといい。なんというか文法が異なるんですよね」
「う、うむ。」
「話が単調で、風景がイメージできないと言えばいいんでしょうか」
 棒読みで雑談の切り抜きを聞かされているような感じなんです。」
「もうそっとばかり、簡単に言って貰えぬか。」
「つまり42巻!これだけはホント偽書で駄作でオタンコナス!」
「やけに語るの」
「当然ですよ。幼い頃にヘンドリックスに出会ったからこそ
 司書になった訳ですから。私にとって神なんですよ。神。
 ラヴ・イズ・ゴッド。ああ。全巻読破するのが夢なんです。」

 眼鏡の女は恍惚の表情を浮かべ、窓から空を見上げた。
 時々ストーブで爆ぜる薪と木々が木枯らしに寒々と騒めく音が
 この薄暗い図書館に時々響いた。

「で。結局、冒険家は世界樹を見つけたのか?」
「おやおやぁ?ははぁ!ご存知ない?」
「キサマ・・」
「最終巻付近は残念ながら残ってないんですよ。なので誰も知りません」
「手がかりもか?」
「東の海の島っていうだけです。そういえば鬼島さん、東方人ですよね」
「左様。」
「なら逆に教えてくださいよ。東の方の海の話を。」
「いや、西と南北には大陸やら島やらがあるとは聞いておったが、
 東の海はのう。まあ、常識で考えて世界の果てまで海じゃろ。」
「それが知りたいんですよ。」
「何も無い遠大な海の砂漠をか?」

「んー、アプローチを変えましょう。
 どんな病も一瞬で治すマジックアイテムのお噺は知りません?」
「その辺は神か仏か仙人かのすぺしゃるあいてむじゃ。
 霊験あらたかな薬ゆえとりあえず何でも治ると言う具合」
「え、なんか雑。」
「知らぬ。むしろ不老不死の薬の方が馴染みが深いような気もするの」
「へー。どんな物なです?」
「なんじゃったか。人魚の生き肝?」
「うっ。」
「いや肉、じゃったか?漁師が人づてに貰った人魚の肉を、
 その娘が勝手に食ろうて不老不死になったという話じゃ」
「お肉の出所が唐突ですね」
「浜で拾った人魚の肉を、庄屋が振る舞うところから話が始まるのじゃが、
 その時点で既に唐突なのじゃな。」
「効果あると思います?」
「サファギンの生き肝でも効くのじゃ、似たような効果はあるやも知れぬ。」

「はー。お城で根を詰めてるお役人さん達に差し入れてあげたいですね。」
「今年は海開きの前に封鎖されたからの。件の葉の代わりにはならんが、
 冒険者とは目敏い人種ゆえ、現地では密漁の的にされておるのやも。
 貴様が人づてに貰うた半魚人のような謎の肉を、ハーゲンダッツに献上すれば再現可能じゃ。」
「ううう、まだ死にたくないよう。悪質な国家反逆罪に問われる。」
「伝説の薬師に、劇薬を調合して貰うのも良かろう。多分合法じゃ。」
「城内にはびこる、気力漲る公僕ゾンビのデスマーチ(合法)。ゾッとしますね。」
「まさに現代の奴隷。酷な生業よ。」
「でもあれって原料何なんでしょうね?SAIさんに聞いてません?」
「詳しくは聞いておらんが、「酒とか」らしい。」
「ええっ。」

「不老不死に戻るが、この国にも似たような話があろう?」
「そんなお話ありましたっけ?」
「難破船で溺れた王子を助けた人魚の話」
「あー・・。え?」
「王子に惚れた人魚が、自らの尾と声を王子に捧げ、
 ついに不老不死となった王子と人魚は、末長く幸せに暮らしたという。」
「ええっ。色々混ざってません?」
「そうじゃったか?」
「そうですよ。初めて聞きましたよ?!しかも、雑!」
「儂の国では噺の流れは、概ねそのような風じゃからのう。」
「そうなんですね。じゃあ、ヘンドリックスの手掛かりも無しかぁ。
 ところで、何で彼の事を調べようとしたんです?」

「気にした事が無かったのじゃが、世界樹の葉とは、そも何なのかと思うての」
「何って世界樹の葉っぱでしょう?」
「樹を見たことはあるのか?割と知られた薬草じゃが、その発生については誰も知らん」
「確かに。。。」
「手掛かりは無しか。」

「んー。知を求めて古典を当たるのはいいですが、遠回りじゃありません?」
「近道があるのか?」
「研究しているところに行けばいいんですよ。魔導学院。ああ、青春の日々。」
「象牙の塔か、久しく行っておらんな」
「レベルを上げて物理で殴れの鬼島さんには縁遠い場所とは思いますが、
 やっぱり世の中、力こそパワーが全てじゃないと思うんですよ」
「貴様にたまに無礼じゃの。」
「まあ、とにかく。付与魔術師だった頃のコネクションで関係学部を当たってみるのが良いかと。
 英雄の肩書きもありますから、何かしらの力にはなってくれると思いますよ」
「益体のない肩書きにそのような特典が。」
「彼処は頭デッカチな権威主義の魔窟ですからね。何なら力づくでふふふ。。」
「なんぞ恨みでもあるのか。」
「え。ありません。もう、、本の整理があるので失礼しますね」

眼鏡の底に曇った表情を見たような気がしたが、
それは夕に入った暗がりの陰影のせいかも知れず。
外方を向いた輪郭は高い足音を立て、聳え立つ本の森に消えていった。
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