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時は帝暦五六-年。
激動の大陸あしゅくらいずでは、今日も健康増進美が叫ばれ、
何某還元水、籠池の蓮、材料製法門外不出の劇薬が乱れ飛ぶ。
滋養強壮、西高東低、美味即糖脂肪。
混沌の極みに産み落とされしは、不幸の双子、歴史の徒花。
異国の老人が編み出したる東洋の神秘「末期の水卸問屋」であった。
激動の大陸あしゅくらいずでは、今日も健康増進美が叫ばれ、
何某還元水、籠池の蓮、材料製法門外不出の劇薬が乱れ飛ぶ。
滋養強壮、西高東低、美味即糖脂肪。
混沌の極みに産み落とされしは、不幸の双子、歴史の徒花。
異国の老人が編み出したる東洋の神秘「末期の水卸問屋」であった。
剥き身の筈の刀身。
武器の束だけ握りしめたが如き様相は、些か滑稽にも見える。
それが酔狂でないのは、一合目の踏み込みを見るに明らかであった。
何より、相対したるは異能の集う冒険者の中にあって、尚、天稟。
何より、相対したるは異能の集う冒険者の中にあって、尚、天稟。
一合目を免れたのは、
間合いと踏み込み、肩の初動。
脳髄に走る、既視感。
間合いと踏み込み、肩の初動。
脳髄に走る、既視感。
「まさか不可視付与されてるのに避けられるとは…」
残念閔子騫、という風で踵を返す男を見送り、老人は納刀した。
花村流に「眩(くらぎ)」と剣がある。
暗中、夜眼に慣れた相手に、刃で返した月の光を浴びせ、
瞳孔の縮小を以って、相手を一瞬暗闇に陥れる月遁である。
花村流は其処から剣筋が首筋を走る。
男の技は、日の下でありながら、しかし其れに良く似ていた。
花村流に「眩(くらぎ)」と剣がある。
暗中、夜眼に慣れた相手に、刃で返した月の光を浴びせ、
瞳孔の縮小を以って、相手を一瞬暗闇に陥れる月遁である。
花村流は其処から剣筋が首筋を走る。
男の技は、日の下でありながら、しかし其れに良く似ていた。