忍者ブログ
年年歳歳花相似歳歳年年人不同
 
05月
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
04月
06月
 
100 99 98 97 96 95
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

魔導学院としては意外な事であるが、いわゆる戦闘魔術は最重要課題ではない。
歴史的背景として職業魔術師の養成機関をになった事から、
学内部のヒルエラキーは上位に位置し、関心も高いのであるが、
今やそれはどちらかと言うと伝統的スポーツの立ち位置であり、
実生活における利用度を考えても分かるとおり、それを生業とする
一部の人間を除いては、政治経済法律、化学や歴史を学ぶ方が余程生産的なのである。


魔術の実戦訓練場が学院敷地はずれの地下に存在するのも、
恐らくそう言った事情によるものであろう。
訓練棟は、ラグーンの海底遺跡から採掘した耐魔術壁と耐術補強が施されており、
その堅牢性は度々侵略を受けては補強した王宮を凌ぐものである。
この地下施設は専ら、実験室や下級術師のためのものであり、
中級以上の対象範囲の広い者たちは棟の真上に存在する地上のグラウンドを用いる。
グラウンドは月2回整地されるが、概ね荒されている状態が常で
足場が不安定な事もあり、使用の際は許可と浮遊魔術がある程度操れる事が推奨される。

「見たまえ。この荒れた果てたグラウンドを。」
 我が研究室で学んだ者ならば、心に焼きつく青春の大地だ」
「貴様には随分兎跳びをさせられたがの。」
「ははあ。この学棟は兎の穴とも呼ばれるからな!兎が跳ばぬでどうするね?」
「それは益体もない戦闘魔術に魅入られて、沼にはまった連中の例えじゃろ。」
「おお、君は知っていたのか。」
「引き千切れんばかりの脚では幸運は掴めまい。もはや禍物じゃ。」
「ラビットフッドか。己の脚ならそう無くすことは無かろうし、
 出来の悪いチャームを買う手間も省けるとは思わんか?儲かったな!」
「全く変わらんの。学徒をどう導きたいのじゃ。」
「泥臭さこそエンチャンターの誉れ。心技体を追い込む事で
 得られる境地がある。まず地力。これ無しに術など成り立たん。
 お手軽、お綺麗な術なぞ犬にでも食わせておけと言う事だ。」
「素養に恵まれん者に這いずるしか道が有らぬのは確かじゃが、
 あまり賛同はできんな」
「はっはっは。君には素養が無かったからな。
 だが買う苦労にも質がある。ここなら滅多に死にはせん。」
「たまに死ぬのか?」
「当然だ。だが、それは武術の稽古も変わりはあるまい?」
「然り。だがそろそろ良いか?ここで朝まで語り明かすつもりは有らん。」
「良かろう。では決闘だ。」

 ”Accessellfin”
「さて本来、今や私は逆立ちしても君に勝ち目が無い。
 だが戦いとは夫未戦而廟算、勝者得算多也と言うだろう?」
「言いたい事が分からんが、その算段が誤っておらねば良いの。」
「では問おう。腰の長物はどうしたね?」
「入館で預けたゆえ持っちゃおらんな。」
「フハハ。素手で戦うかね?杖なら貸すぞ?」
「老い耄れめ。さっさと掛かって来んか。」
「誰が掛かるものかね。接近では戦わん。」
「得策じゃな。」
「降参かね?」
「瞬殺は無くなったわな。」

 “MagicMissile”
「温い攻撃をしおって。」
「ハッハー!良く躱すじゃあないか。」
「貴様の練度が足りておらんだけじゃ。」
 ”FireWall”
「無論。それも、知っている。」
「ぬ。」
「戯れと思って油断し過ぎたな。」

巻き上がる爆炎の熱風に老魔術師は目を細めた。
睫毛の影に黒い点を認めた瞬間に、灼熱の痛みと暗黒が襲う。
それは頭部への飛来物。僅かに途切れた集中が、
次に手の甲と指先に走る激痛に再び覚醒する。

「(金属音?)」
「術を切らすとは細い神経じゃの。術師とは思えんな。」
「暗器か。」
「足元を見るがよい。」
「視線を切る余裕はない。」
「殊勝じゃの。銭投げじゃ。授業料じゃ取っておけ。」
「武器ですら無かったか。」
「初めから接近戦で来れば楽に終わらせてやったものを。」
「私はまだ完全には敗れてはいない。」
「懲りんの。手を痛めた魔術師に何が出来る。
 魔剣を召喚するか?それとも放出魔術でも撃ってみるか?
 その集中力で当たるのか?術後硬直はどうじゃ、発動するのか?」

“MuscleSpark”
「術師だからと言って接近戦が出来ない訳でも苦手という訳でもない。」
「ヤケクソを打つか、男じゃの。」

身を屈め、膝から下を狙いタックルを仕掛ける。
間合いの寸前で袴に隠れていたが相手の膝が僅かに沈むのを認めた、膝蹴りの気配。
ホールドの為に開いた腕を、十字に組み体を当てる。強烈な膝がガードの下から跳ね上げるが、
顎の守った事で意識と体は残った。超接近では体格と体重が物を言う。
組んだ腕で相手の腿を取り、強引に足を絡み込んで押して組み敷く。

「マウントポジションだ。もう逃げらん。」
「ほほう。さすが軍隊式。格闘術も熟すではないか。」
「ああ、何なら後で君にも伝授するが?」
「何の考えも無しにこの体勢を取られると思うから貴様は弱いのじゃ。」
「負け惜しみとは珍しいな?この体格差では私の耳は取れんし、
 跳ね除けるにも私は結構重量級だ。さあ決着だ、死んでくれるな?」

親指を固めた指牙を肋骨の隙間に捩じ込む。
「跳ね除け方というのがあってじゃな。」
僅かに硬直した体を海老反りで崩し、沈み込んだ相手の顔面を両手で押さえ
小さく捻り込み、体を入れ替えた。3手詰めである。

「参ったな。完敗だ。」
「ふは。歯を食いしばれ」

歯を噛み口角を上げた狂気を含んだ笑みともつかぬ顔面に鉄槌打ちを叩き込む。
硬い肉を潰す音が響く。頭部に振り下ろす拳の音に水が飛び散る音が混ざり始めた頃、
老人は手を止め術師から離れた。

「ん。服が。これでは妻に怒られてしまう。只でさえ安月給なのだ」
「銭にもならぬ手合わせなぞするからじゃ。六文ぐらいなら餞別にくれてやるが。」

老魔術師は息荒く肘を付き、身を持ち上げた。
呼吸音が頭蓋に響き、目は眼内で脈動する血管を確かに捉えた。
赤暗くぼやけた視界のせいか現実感が薄いように感じたが、
それは頭部へのダメージによるものと判断を巡らせた。酸素が足りない。

「は。あわよくば、君に掛かった賞金を狙っていたのだがね。」
「昔は知らんが、今や二流半の力量ではこの辺りが限界じゃろ」
「そう誤算も多かった。刺牙を効かされるとは。
 マッスルスパークからのマウントを覆された事もな」
「術に頼って痛覚や人体の構造を忘れたゆえじゃ。」
「・・・手厳しいな。ところで。火の壁はどうやって防いだ?」
「あれは直撃しておったぞ。威力不足じゃったが。」
「君の魔力耐性では防げんだろう」
「隠匿の術師やら塔の魔術師が出る前に、連山という凄腕の術師がおっての。」
「一杯食わされたのだな?」
「左様。間合いを見誤り丸焼きじゃ。そのまま牢獄行きよ。」
「フハハ、それは痛快」
「それからサグメという細工師に、耐火属性の服を誂えて貰った顛末よ」
「なるほど、それは情報不足だったな。」
「先の術師どもは術の威力が高過ぎて、会敵瞬殺で挑まねば敗れるからの
 貴様の戦いの線引きをずらして、先んじて術を出す手筈は中々じゃったが」
「つまり?」
「修行が足らん。」
「いや、今の私にはこのぐらいで十分だ。講義の材料にでもするさ。」
「負け戦のか?」
「私は実践派だ。勝ち方も負け方も教えるのさ。
 痛ぅ。お開きにしよう。ギャラリーも増え過ぎた。」
「酷い見世物じゃ。」
「ああ。全くだ。」
COMMENT
文字と絵 Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
お名前
メール
URL
PASS
 
PRODUCED BY SHINOBI.JP
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
[11/21 SAI]
[11/12 ホヅミPL]
[07/11 SAI]
[06/20 SAI]
[01/09 ホヅミ]
(01/06)
(12/26)
(12/25)
(12/24)
(11/08)
HN:
鬼島 玄斎/Kijima Gensai
性別:
男性
盛砂
検索
古事記
(08/09)
(08/16)
(08/18)
(08/20)
(08/22)
 
PR