軋む音を挙げ、石人形が魔神を木偶の様に叩き潰した。
無機質な蠱毒を永遠繰り返す炎と臭水の匂いで満たされた鉛の棺桶。
この遺棄された海中都市に生者の匂いはなく、勝者も敗者もまた存在しない。
腕に覚えのある冒険者にとって、此処が良質な狩場である事は間違いない。
実際、手に入る遺失魔術や武器は高値で取引され富を成すが、
それは同時に、この無意味な坩堝に身を投じる事を意味する。
視線を落とすと、焼け焦げた死体が無造作に転がっていた。
その人生が如何なる物であったのかは知れぬが、然し此処で果てた。
それは、日に焼かれた蟻の死骸程の物で、此処では死も然程の意味を持たない。
生きながらに、鉄屑と等しく無価値に成る場所。
天国でも地獄でもない場所。導かれぬ者が炎に焦がされる場所。
此の世の煉獄を唯彷徨う。
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