忍者ブログ
年年歳歳花相似歳歳年年人不同
 
05月
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
04月
06月
 
5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

剥き身の筈の刀身。

武器の束だけ握りしめたが如き様相は、些か滑稽にも見える。
それが酔狂でないのは、一合目の踏み込みを見るに明らかであった。
何より、相対したるは異能の集う冒険者の中にあって、尚、天稟。

一合目を免れたのは、
間合いと踏み込み、肩の初動。
脳髄に走る、既視感。


「まさか不可視付与されてるのに避けられるとは…」


残念閔子騫、という風で踵を返す男を見送り、老人は納刀した。


花村流に「眩(くらぎ)」と剣がある。
暗中、夜眼に慣れた相手に、刃で返した月の光を浴びせ、
瞳孔の縮小を以って、相手を一瞬暗闇に陥れる月遁である。
花村流は其処から剣筋が首筋を走る。

男の技は、日の下でありながら、しかし其れに良く似ていた。

生命の気配と蒸気に噎せる密林の奥深く。
蔦に絡まる大樹の陰にらしからぬ光を目の端に捉えた。
苔生し黄色く変色した成れの果て、胴に纏うは輪廻の鎧。

呼んだは其れか鎧か。

花村流は守の体系であり、
重厚な受けで崩して打ち取る強かに堅実な剣である。
また、花村流では膠着の盤面を揺さぶる方便を妖刀と呼ぶ。
妖刀とは即ち、実体の無い瞞し。

挙動、視線、言動を相手の無意識下に植え込み、
ある瞬間に正体不明の一手(鵺)を差す。
隙か好機かはてまた罠か。目まぐるしく渦巻き昂る情動。思考の死角。
この刹那。花村の剣は妖刀に「化ける」のである。

長い乱世において、花村流の妖刀が他流に組み込まれずにいたのは、
抜けば必至の殺人剣だからではない。
実部が剣術ではなく、人心を惑わす幻術だからに他ならない。
故に、凄腕の兵法者でさえその「剣」を見破る事が出来ず、
ある者は喰い斃され、ある者は狐に抓まれたが如くになるのであった。

今日に至り、花村流の使い手は此の老人が唯一人。
人を惑わす乱世の剣は、緩やかに終焉を迎えようとしていた。

 
PRODUCED BY SHINOBI.JP
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
[11/21 SAI]
[11/12 ホヅミPL]
[07/11 SAI]
[06/20 SAI]
[01/09 ホヅミ]
(01/06)
(12/26)
(12/25)
(12/24)
(11/08)
HN:
鬼島 玄斎/Kijima Gensai
性別:
男性
盛砂
検索
古事記
(08/09)
(08/16)
(08/18)
(08/20)
(08/22)
 
PR