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蛙鳴く 枡酒睨み 下戸下戸と

暗夜、鬼灯の様に赤々と泥道を照らす二つの提灯と、霰を散らし音を立てる雨傘の下、伊作は同行の規介に昨今話題の鬼の正体を訪ねた。「知らぬ。」と規介は素っ気なく答え、泥を蹴散らすように歩を進めた。

 東海を臨むこの街道は、国と国を繋ぐ動脈である。 廻船が発達した今尚この街道が発達しているのは、他でもなく面した海が急流の極めて複雑な難所続きだからである。より遠方であればこの急流地帯を大きく避けることも出来るが、近隣を行くにあたっては、時間的労苦を鑑みて陸上からの移動が適当なのだ。 伊作と規介は、火付盗賊改配下の同心である。近頃の事件に関わり、街道の見回りを任されていた。五人組の同心が一度に殺されたとあって、この尋常ならざる業を恐れ一人での見回りは無くなったが、同胞の死に、彼ら一同この俺がと、大江山の鬼退治が如く心持ちで事に当たっていた。鬼が現れるのは、決まって曇天の夜。正にこうした夜である。軽口を挟んではいても、伊作の意識は常に周囲へと向けられていた。

 道の先に人影が佇んでいるのが見える。はっと息を飲み、傘と提灯を捨て刀に手を掛けた。「道祖神だ。」規介はまた、素っ気なく答えた。提灯の火に照らされて、人影が道祖神である石柱の輪郭を表した。なんだ脅してくれるなと伊作が口にする刹那、規介が叫んだ。「おい、向こうを見ろ。 」道を外れた畑の中に蠢く人影がある。それは何かを踏み締めるような動きをし、ぴちゃりぴちゃりと音をさせている。「何者だ。」叫ぶ規介に影の主は答えない。伊作は刀を抜き、じりじりと距離を詰めると、影は動きを止め石のように固まった。規介が提灯を人影の方へ掲げると、人影は脱兎の如く逃げ出した。 「待て。」伊作がこれを追う姿が見え、ずらり一閃が走った。伊作は冷静な質の男である。その奴にしては随分事を急ぐ、と規介は思う。やがて影は転けたような音を立て倒れ込み、もがくでもなく動かなくなった。 用心深く倒れた影の辺りに歩を進めると、影の主の草鞋の先に見慣れた袴が見える。倒れたのは伊作であった。

 提灯を脇に置くと、規介は静かに剣を抜き暗中に眼を凝らした、道祖神は提灯の灯を浴びて、蝋燭の火に赤く揺れ、墓石のように佇んでいる。「おい、伊作。」伊作の様子を伺おうとした刹那、視界の端に巨大な爪が走り、下腹から湯が沸くような強烈な熱に襲われた、腹に手をやるとぬるりと暖かく海鼠のような手応えがして、白い帯が腹から垂れていた。それが己の腸であると気が付いた伊作の断末魔は、雨音に紛れ、やがて傘がバラバラと雨を弾く音だけが周囲に響いた。


◆◆◆

え?この設定じゃないですって?多分あっちの方が悪い夢だったんですよ。>>某人 敵を黙らす無慈悲な刺突「ダーットレ」。三度見してダンツァトーレの見間違いだと気が付く、なんだノーザンダンサー系か。最近、優しい言葉をかけてくれる心のスカリーを探していますが見つかりません。
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