花村流は守の体系であり、
重厚な受けで崩して打ち取る強かに堅実な剣である。
重厚な受けで崩して打ち取る強かに堅実な剣である。
また、花村流では膠着の盤面を揺さぶる方便を妖刀と呼ぶ。
妖刀とは即ち、実体の無い瞞し。
妖刀とは即ち、実体の無い瞞し。
挙動、視線、言動を相手の無意識下に植え込み、
ある瞬間に正体不明の一手(鵺)を差す。
隙か好機かはてまた罠か。目まぐるしく渦巻き昂る情動。思考の死角。
隙か好機かはてまた罠か。目まぐるしく渦巻き昂る情動。思考の死角。
この刹那。花村の剣は妖刀に「化ける」のである。
長い乱世において、花村流の妖刀が他流に組み込まれずにいたのは、
抜けば必至の殺人剣だからではない。
実部が剣術ではなく、人心を惑わす幻術だからに他ならない。
故に、凄腕の兵法者でさえその「剣」を見破る事が出来ず、
ある者は喰い斃され、ある者は狐に抓まれたが如くになるのであった。
ある者は喰い斃され、ある者は狐に抓まれたが如くになるのであった。
今日に至り、花村流の使い手は此の老人が唯一人。
人を惑わす乱世の剣は、緩やかに終焉を迎えようとしていた。
面に秘されし術の結貳詛印を使ひけるが
昨夜、手合いにて之を砕かるる 。
散りたる欠片の光るを見るに、
之にて一杯の口実を得たり。
金剛力は失えど、般若湯を得たるなり。
智慧の湯をば坏に注げば、
全て世は事もなし。
昨夜、手合いにて之を砕かるる 。
散りたる欠片の光るを見るに、
之にて一杯の口実を得たり。
金剛力は失えど、般若湯を得たるなり。
智慧の湯をば坏に注げば、
全て世は事もなし。

